アパレル・ライフスタイルブランドのホテル運営の契約関係
アパレル・ライフスタイルブランドのホテル(「ブランドホテル」)の契約形態は、ホテルオーナー(所有者)とオペレーター(運営受託者)の関係によって様々です。主な契約形態の概要は以下の通りです。
1. 直営方式
ホテルオーナーがオペレーション(運営)も自ら行う形態です。伝統的な旅館業はこの形態です。直営方式においてアパレル・ライフスタイルブランド(「ライセンサー」がライセンスを行ってホテルを運営するのがブランドホテルの一番シンプルな形態です。
直営方式では、ホテルオーナーが収益リスクを全て取ることになります。ライセンサーは通常は定額ロイヤルティと売上高実績に基づく割増ロイヤルティを受け取るので、安定的収益が期待できます。他方で運営への関与は限定的になるので積極的なブランディング戦略には不向き(どちらかといえば、ブランド価値が安定した伝統的なブランド向け)です。
ホテル全体についてブランドライセンスを行うのが基本形ですが、部屋やフロアを限定し、期間を定めて、部分的なライセンスを行うという方法もあり得ます。
2. リース方式
ホテルオーナーがオペレーターに対してホテル不動産を賃貸借し、オペレーターがホテルの運営を行う形態です。ブランドホテルのライセンスは、オペレーターがライセンスを受けます(ただしホテルオーナーを加えた三者間契約の可能性もあり)
リース方式では、ホテルオーナー側は安定的な賃料収入を得られますが、その代わりホテルの業績が好調な場合に直ちに賃料改定(値上げ)するのは困難なのが通常です。他方で、ホテルの業績が悪化した場合や、周辺賃料相場の下落等の客観的事情がある場合、オペレーターから賃料引下げを要請されることもあります(賃料を減額しない旨の特約は無効)。
オペレーターにとってはホテル収益のアップサイド・ダウンサイドを直接享受・負担することになります。ただ、ダウンサイドはリース料までと限界があるので、オペレーターにとっては事業リスクを負ってでも積極的に収益拡大を図りたいというインセンティブが働きます。この点で、ホテルオーナーが安定的収益を望む場合、運営方針にギャップが生じる可能性があります。
3. 運営委託方式
ホテルオーナーがオペレーターにホテル運営を委託する形態です(リース方式との主な違いは、ホテル不動産の賃貸借の有無と、支払がリース料かオペレーションフィーかです)。運営委託の範囲は契約次第ですが、包括的に任せるよりも、ホテル運営状況のモニタリング権を確保し、オペレーターに報告義務を課し、運営の改善を要請することで、協同してホテルの収益向上を目指す形が多いと思われます。ライセンサーがオペレーターに対してブランドホテルのライセンスを行います(ただしホテルオーナーを加えた三者間契約の可能性もあり)
通常は、オペレーターが従業員の雇用や許認可の取得(旅館業法上の旅館業許可の取得、食品衛生法に基づく料飲業許可等)を行い、また必要に応じて旅行代理店や通訳案内士(登録が必要)と契約を行い、宿泊・料飲・観光・体験サービスを提供します。
4. フランチャイズ方式
フランチャイザーがホテルオーナーに対し経営指導を行い、フィーを受け取る形態です。どの程度の経営指導やサポートが行われるかはケースバイケースです。既存のホテルブランドを使うのが通常なので、アパレル・ライフスタイル等のブランドホテルには用いられ難いといえます。
主な契約形態の概要は以下の通りですが、ホテルオーナーとオペレーターとの間の中間的形態の契約のバリエーションは無数にあり得ます(例えば、リース方式において借主が更に外部オペレーターに運営委託するのは、2.及び3.の組み合わせとなります)。運営の決定や主導を誰が担い、誰がどのリスクを負担するかという実質的・経済的判断によって契約条件が決まっていくことになります。
以上
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